富田和明的台湾太鼓報告 その3 | 富田和明的太鼓日記『その日の気分打!』

富田和明的太鼓日記『その日の気分打!』

太鼓打ち・富田和明の、太鼓と関係あることないことをその日の気分で綴る、和太鼓ドンドコ日記






 ホテルから台北駅までは、約二キロ。タクシーに乗ったが、台北の車運転術は刺激的だ。後ろ座席に乗っていても恐ろしい。


 バイクの波にブチ突入するかのように前に進み、横からバスが迫り込んでくる。横から後ろから、いつぶつけられるかとヒヤヒヤしながら、前を見ながらも危うくバイクが飛び込んできて、僕は声を上げた。


「いつもこんなに危ないのか?」


「こっちは大丈夫だ!」運転手は嬉しそうに後ろを振り向いて答える。


「前を見て!」僕が叫ぶ。


 


 


 


 


 僕が買った列車のチケットは、台北8:38(自強号1061号)発だ。


 改札の中に入ってもセブンイレブンがあって、水とティッシュを買う。


 列車に乗り込むと冷房が効きすぎていて寒いくらい。


 座席指定だが、空いている席には自由に座っていていいようで、僕の席にも座っていた人がいたが、僕が行くとサッと席を立った。


 


 この特急列車で約二時間四十分走る。


 


 


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 台北から新城に向かう途中で買った駅弁


 


 


 途中に見た海岸線・東海岸は手つかずの自然に思えた。照りつける太陽の下、九十九里浜のような海岸(全長124キロ)に人が一人も見えない。なぜだ?暑すぎるからか?


 この浜で泳いでみたい、そう思うのは無謀なことなのだろうか・・・。


 


 


 


 


 花蓮駅の一つ手前。新城駅で下車。


 


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 駅前に翌日のコンサートの看板があった。タクシーの運転手に撮ってもらう


 


 


 ここからタクシーで10分ほど。集合地の太魯閣国家自然公園管理所に着く。


「太魯閣」と書いて「タロコ」と読むのは日本語かと思っていたら、先住民族の言葉でこの土地の名称がタロコだった。太魯閣は漢字の当て字。


 


 


 


 


 この日の朝6時に台北をバスで出発したという優劇団の皆さんが、一足先にここに到着して受付をしていた。


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 よくある受付風景である


 


 ここで電話で何度も話をしていたCさんやHさんと会う。とても歓迎してくれたけれど、忙しそうであまりゆっくりと話はできない。パンフレットやらスケジュール表をもらう。


 


 


 どういう活動なのか、今一つ掴めなかった僕だが、ここに来てやっと分かった(遅すぎるか?)。


 この優表演芸術劇団は、歩くことを大きな活動の一つにしている劇団で、今回はこの優れた自然公園である太魯閣国家公園が主催する自然探索ツアーに全面協力しているのだ。


 宣伝から受付、歩くことの先導、そして最後の夜にコンサートの開催。


 僕が参加したこの合宿の一般参加者が50名ほど、それに劇団関係者が25名ほど、公園関係者も30名ほどその他が加わり、全体では100名を越す人が一緒に動く。


 


 


 午後二時に受付があって出発は三時過ぎになった。


 マイクロバス七台に救急車まで付く。パトカーから白バイまでが先導しているし、マスコミの取材陣まで一緒だ。


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 移動途中の休憩時に


 


 


 初日は、車でずっと山を登り、二日目は歩いたり、車に乗ったりで山を下りてくるという。


 


 この日は、バスで二時間半か三時間、渓谷の道を登った。


 それぞれのバスには一人づつ解説委員と劇団スタッフが乗っている。このツアーの参加者は、やはり劇団に興味を持っている人やファンが多かった。台北を中心に全国から集まっていた。日本人は僕一人だったけれど。


「どうしてあなたはこの活動の事を知ったの?」


「ホームページを見たんです」


「そうなんですか、よく来ましたね!」


 とみんな言ってくれるけれど、特別扱いは何もない(当たり前)。


 


 


 タロコから川を登ると先には標高3,000メートル級の山もある。この日の宿は2,500メートルを越していて、充分涼しいし、頭も吐き気はないけれど、なんだかフワフワしていた。空気が薄いのが判る。人によってはここでも高山病になるらしい。


 日本で言う国民宿舎のような山荘に泊まる。


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 霧に包まれた「観雲山荘」。雲の中なのかもしれない


 


 


 夕食の時、劇団の代表Rさん(僕と同級生だった)や太鼓作曲指導のHさん(マレーシア生まれで香港で活動していた時に、Rさんと出会う。元々は獅子舞の打楽器チームにいたらしい)らと一緒に卓を囲んで食べたが、まだ公演を見たこともないし、何を聞いてよいものやら・・・。話が出きる時間も少なかった。酒類はなし。


 


 


 夕食後の活動は二本立てで、まず国立公園の自然環境(動植物など)の説明などをスライドを見ながら一時間聞く。解説委員が本当に楽しそうに説明していて、それをまたみんなが楽しそうに聞いていた。これは30年以上前のユースホステルノリか?と思ったほど。


 


 その後、劇団代表のRさんからのお話。


「まあみなさん気楽に聞いて下さいね。このお香は特に意味は無いんだけどこの前日本で買ってきたから(愛地球博に来日した)付けておくわ」と話の前に火を付け、テーブルに置いた。


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 隣のHさん(右)は一言も喋らずじっと座っているだけ、Rさん(左)は癒しの教祖様のように終始にこやかに語りかける。お二人はご夫婦でもある


 


「歩くことは誰にでも出来るとても簡単な、でもとても大切なことです。明日、私たちは歩きますけれど二つのお願いをします。一つは歩くときにはできるだけ喋らないで、自然の音をしっかり聞きましょう。もう一つは、感じて下さい。大地、風、自分の声、なんでもいいんです・・・・」などなど。


 


 


 とても太鼓チームのミーティングとは思えない、心のお話。


 日本の鬼太鼓座は走ることで激しく自然と自己に接したが、この台湾の優劇団は静(せい)だ。


 なぜ私たちは歩くのか、またどんな活動を行って来たかということの説明があり、最後に目を閉じて「禅座静修」というのがあった。


 


 Rさんの指導で目を閉じて座っていると、手で導かれ歩く、あまり説明してしまうと興が冷めるのでここでは書かないが、最後に、「さあ目を開けて下さい」の声で目を開けると、知らぬ間に全員が戸外に出ていた。見上げた空は、満天の星。歓声が上がる。


 


 


 


 標高が高い上にさっきまで辺りを覆い隠していた霧がすべてなくなり、一点の陰りもない空に変身していた。天の川もよく見えた。その空を流れ星がいくつも駆けては消える。


 山で見る夜空は格別だが、それにしても大きな歓声を上げる参加の皆さんは非常に純粋に見えた。


 参加者の平均年齢は、そんなに若くはない。僕が真ん中くらいだろうか。それなのに、青少年の心のような皆さんだった。台湾の人々がみんなこうなのか、それともこんなツアーに申し込むような人々が変わっているのか、僕には分からなかったが。


 


 


 


 


 明日は朝5時半起床。6時40分に出発だ。車で2,800メートルのポイントまで上がり、そこから歩くという。


 27人部屋に布団を並べて、僕も寝る。寒いので、持ってきた服とズボンは全部重ね着をした。


 星空の下、遠くで誰かが気持ちよさそうに唄を歌っているのが聞こえた。


 


 


 つづく

 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 















 


 


 


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