いまさら言うまでもなく、僕は島が好きだ。
生まれが淡路島で、 太鼓を習ったのが佐渡ヶ島で、が体の中に大きな流れとなってしまったからかもしれないが。 太鼓打ちとして開眼したのが三宅島の太鼓。耳にづっと残っていた言葉が竹富島で聞いた打組。生まれて初めて入った映画館が三島座。一番好きな祭りが徳島の阿波踊り。 海に浮かぶ島から、直接は関係のない島と名前がつくだけのものまで結構、好みに縁がある。
昔、と言ってもそんな遠い昔ではなく鬼太鼓座、鼓童時代、ツアー中に休みがあると、地元の方に「どこか近くに島はない?」と聞いては出かけた。 南フランスの小島。プエルトリコの小島。瀬戸内海の小島。日本海の小島。
どうして好きなのか?一番好きなのは、一日で歩いて一周できる程度の島。にもかかわらずきちんと人々の生活の営みがある島。
昨日、淡路島の大きな地図を買ってきた。 海岸線が約161キロメートルとなっていた。 これを歩ける道路で計算するとどのくらいの距離になるのか‥‥‥と眺めていたら、気になる島を見つけた。
沼島と書いて「ぬしま」。 淡路島からまだ船に乗って行く。 15年前に行ったという親父は、船で20分かかると言っていたが、今は連絡船に乗って約10分で着いてしまうという。 あまりにも身近すぎて、これまで一度も行ったことがなかった島だ。
今朝起きて、今日も見事な秋晴れ。
「よし行こう!」と決めた。 我が家から車で飛ばすと1時間程度で船着き場まで着いてしまうが、僕もほとんど来た覚えがない土地だ。沼島まで船が出ている港の名前が「土生」。
読めますか?この土生。
これで「ハブ」と読みます。
淡路島は「国の始まりが淡路島なら‥‥」と寅さんでも知っているくらい有名ですが、その淡路島より先に生まれた沼島が本当の「おのころ島」とも言われている。 日本一の座を淡路島と競っているくらい歴史がある島なんです。古い。由緒在る言葉が多い。
沼島汽船「しおかぜ」。
海上10分なので、座った、出航した、と思えば、着岸した。
島に自然遊歩道があって一周できる。 案内図には一周約4時間と書いてあった。ちょうどいい距離だ。
昼時に着いたのでまず腹ごしらえと思って食堂に入ったら満員。で、先に歩くことにした。
山に上がれば人一人すれちがわない。 漁業の島なので、農作業をしている人が少ないのだろうか。
人とは会わないが、道々にお地蔵さんの数がやたら多くて寂しくはない。
六本木当たりの信号機の数よりも多い。
途中で雨が降ってきたが、秋雨は通り雨だった。濡れていく。
誰とも会わない時間。
お地蔵さんと、道を塞ぐ蜘蛛さんと話をするだけ。
山ノ大神で柏手を打ち、燈台で雨宿りをして、二時間少々でまた船着き場まで帰ってきた。
この沼島には立派な神社もある。祭りも盛大なようだ。 とても興味を覚えた、万葉集にも詠まれた海人(あま)族の島である。
こんなに手軽に不思議な時間を味わえる。日本もまだまだ面白い。
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