二日目に別の太鼓アイランドチームの稽古を入れなければいけなかったので、一日で終わらせてしまったからです。
一日で終わってしまうので、基本稽古もそこそこにすぐに、太鼓教室発表会用曲の稽古を行いました。
来週の日曜日に行う発表会『打っ手2013』で演奏する曲「HITOTSU(ひとつ)」は、これまでに稽古したことがあったのは一人だけで、その他のメンバーは初めて叩く。
しかもこの一回の稽古のみで、後は当日のリハーサルで叩いて本番を迎えるというスピード仕上げの曲でした。
だから参加者も初めて太鼓を叩く、という方には遠慮してもらって(そういう方には5月合宿をお勧めして)、経験者だけで、ま、いつもの馴染みのメンバーばかりが参加していたのです。
が、
その中にあって、ただ一人、太鼓もウン十年振りに叩くという、太鼓アイランドも初めて参加する人がいました。
名前をMさんといいます。
彼女は僕がまだ鬼太鼓座時代に出会った人で、実は彼女、その昔、知床半島に近い北海道・中標津(なかしべつ)で天才少女と呼ばれた想い出の人だったのです。
だから特別に彼女は、今回の太鼓合宿に参加してもらったというわけです。
僕がいた頃の佐渡國鬼太鼓座や鼓童の北海道ツアーは、地元太鼓チームの皆さんが中心となって主催して頂く公演が多く、公演当日も鼓童公演の前に、地元太鼓チームの演奏があって、その後に私たちの演奏があった。
そういう公演が連日続くツアーです。
その旅の中で、ある日の公演で、このMさんを見たのでした。
中標津町の体育館に集まった満員の観衆を前に(30数年前の日本というのは熱かったな~。人々の熱気というものが凄まじかった)この熱気パンパンの体育館で、地元太鼓チームのこれまた熱い演奏があり、その後で一人の少女がうたを唄った。
たった一人で唄った。
この時何の歌だったのか記憶にないのだけれど、その満員のお客さんが圧倒的に引き込まれてしまう唄声だったことは覚えている。
僕もその引き込まれて聞いてしまっていた一人でした。
これから自分たち公演が始まるという時に、何気なく聞いていたその歌に心が強く惹かれたのだ。
腰までとどくかのような長い黒髪の、痩せた、ちっちゃい少女。
その彼女とどういうきっかけで話すことになったのかは覚えていないけれど、この後で何回か手紙のやりとりもして、何度か会った。
その頃北海道には二年おきくらい?には行っており、彼女のお父さんが太鼓チームの代表をしていたからそういうことになったのだろう。
当時、小学生だったMさん。
いやMちゃん。
そのMちゃんが僕の太鼓合宿に申し込んで来たのだから、これは断る理由などありません。
Mちゃんは、結婚もして東京にいることは知っていたけれど、そんな連絡を取り合う仲でもなく疎遠になっていたのが、去年、齊藤栄一とのトーク齊富2012を見に来てくれた。
その事が切っ掛けになったのだと思う。
とにかくウン十年振りに太鼓を叩く、北海道を出てから一度もバチを握った事がないという彼女が合宿にやってきた。
最初、バチを持って太鼓を叩いてもらった時、
?
という振り方と音だった。
他のメンバーは今日練習する曲を、動画と楽譜で予習してきている人が多かったのだけれど、彼女は忙しくて一回しか見ていないという。
ずっとぎこちないような振りだったのだけれど、さすが何となく叩けるようになるのは速い。
そして、練習の最後に自由に叩いてもらうコーナーの時、彼女がサッと自分から叩いたドンドコの下打ちを聞いた瞬間、思わず僕の体が弾んだ。
いい下打ちだった。
長い間太鼓から離れていても、そういうところは、しっかりと体に染みているものだ、ということがつくずく判ったのでした。
そして、
歌ですよ、僕が聞きたかったのは。
ところが、
「もう唄っていないので」
の一点張りで、まったく歌はうたってもらえませんでした。
太鼓の練習が終わって、恒例の親睦会という名の宴会が始まりまして、もうここが最後のチャンスと思い、また僕はリクエストしました。
彼女にどうしても歌ってもらうには、こちらがまず歌わなくてはいけません。
僕もそんなにたくさん次々と歌えるわけではないのですが、
しかも、先にアルコールの方が頭に進んでしまい歌詞が出て来なくて悪戦苦闘しておりましたら、
とうとう、
しぶしぶ、
やっと、
彼女が歌ってくれました。
北海盆歌
北海道時代、さんざんに唄い込んだ歌だったんでしょうね。
いい声でした。
どうしたらこんな声が出てくるんですかね、痺れました。
そうしたら、もう一曲、
知床旅情
たぶん、僕一人で聞いていたら泣いていましたが、
他にみんないたので、堪えました。
二曲も歌ってもらって、もう僕もこれ以上せがむつもりはなかったのですが、
三曲目は彼女の方から、歌ってくれました。
タイトル知りませんが、これもいい歌でした。
あらためて、歌っていいな~、とつくづく思いました。
今朝、太鼓合宿の終わりに僕は、昨夜の彼女の歌に感謝を込めて、一曲歌いました。
昨日酔っぱらって歌詞が出てこなかった歌です。
それが、大好きな小椋佳さん作詞歌のこの唄です。
『大いなる旅路』 作詞/小椋 佳
旅は長く遠く 肩の荷重く
時に堪えかねて 涙をふけば
胸の奥に熱く 何かがさわいだ
あの日とめどなく あふれた夢さ
なつかしい人が はるかな日々が
時の流れこえて ほら めぐる旅路さ
なつかしい人が はるかな日々が
時の流れこえて ほら めぐる旅路さ
Mちゃん、ありがとう。
もう歌ってとはせがみませんので、太鼓は思い出した時にでも叩きに来て下さい。
バチは預かっております。。。
嗚呼、今回も楽しい合宿でした。
参加されたすべての皆様、お疲れさまでした~!
また来て下さい。
次回、富田和明的太鼓合宿『Oh!太鼓 54』は、
http://www.tomida-net.com/ootaiko54.html
ご参加お申し込み、お待ちしております。